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[コメント] 犬ヶ島(2018/米)

ウェス・アンダーソンの洒落た世界観が好きな人は、それがストップモーションで楽しめるならそれだけで満足いくはず。ウェスのこだわりと日本愛に溢れた作品。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ストップモーションアニメは昨年スタジオライカの『パラノーマン』を見て虜になって、それ以来意識してみるようにしてるのですが、ウェスがストップモーションで作品を出すならば見に行くしかないですね。しかも舞台は日本。なかなか見に行くことができませんでしたが、ようやく見ることができました。

とりあえず感じたこととしては、ウェスのそれは明らかにライカの物とは異なり、時代に逆行しているというか、実にクラシックな作りでした。滑らかで鮮やかな世界観というのがライカの魅力ですが、むしろ動きはぎこちなかったりどこかチープだったり、ウェスの作品はかなり対象的でした。鼻息とかがまさに象徴的かと思います。 ただ、ライカのそれとは明らかに異なる味があるんですよね。粗いからこそ丁寧さが際立つという逆説。本当に手が込んでいるのがわかるんです。画面いっぱいの情報量には一つ一つに愛がこもっている感じがするんです。全然別種の魅力があって、これはこれで好みでした。

ウェスといえば画面の画作りへのこだわり。いかにお洒落に見せるかが彼らしさだと思っているので、本作でもパペットの仕草然り、それを遺憾なく発揮しています。横スクロールで話が軽快に進んでいく辺りが退屈さを感じさせない作りでした。 あとはこだわりでいえば手間がとにかくすごいんです。日本を題材にしているため、とにかく日本らしい描写にこだわります。まあ外国で暮らす外国人がイメージする日本を風刺したみたいなところはありますが、日本の文化をしっかりと捉えているのは日本人からすると好感を持つ人は多いんじゃないでしょうか。オープニングからの太鼓とか笛の音色が所々でBGMとしても多用されるのとか好きなポイントでもありますし、アタリ少年が日本語を話すのに対して犬が英語を話すのなんかも、別の種類の生き物が別の言葉を話すのを例えた比喩表現として見事。特にあの寿司のシーンは物凄く緻密で感動したのと同時に「いるのか、このシーン」という感じがして(笑)とにかくこだわりにもウェスらしさがありました。

ただ、やっぱりライカと比べるとメッセージ性が弱いですかね。動物愛護の精神でいえばそりゃ考えさせられるものはありましたが、どこか突き刺さるものはなかったとも思います。もっと飼育放棄とか動物による病気感染とかゴミ問題とか、いろいろ深いテーマに絡められるはずでしたが、結局は内容としてのインパクトは少なめ。画としてしっかり楽しめる魅力をもっているので、もう少し中身にも普遍性もったテーマが見えるとよかっただろうなと感じました。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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