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[コメント] シェイプ・オブ・ウォーター(2017/米)

心の照準をどこに定めていいか混乱しているうちに映画終わってしまった。とにかく疲れました。いい意味でも。悪い意味でも。
capricorn1

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







予告編を見ると、声を失った女性と半魚人の心の交流を描いた心温まるファンタジー映画のようだった。

映画の出だしはその期待通りで、心はさっそく「泣く準備」に入る。

しかし、冒頭早々、ヒロインの入浴シーンで、僕の心は混乱する。 まさに「え?」だ。

混乱は続く。次々と記号として現れる設定だ。冷戦下のアメリカ。白黒テレビ。同居人の絵描きは同性愛者。その絵描きは不当に会社を辞めさせられたらしい。絵を企業に売り込むが時代は写真の時代(はるか前から写真の時代だったと思うけど)。 さらに混乱させるのは、警備主任ストリックランド。ちょっとしか出ない人かと思ったら、最後の最後まで出ずっぱりで、ヒロイン以上に詳しく描かれる。とりわけ奥さんとのセックスシーンには驚かされる。このストリックランドの描き方は、いくらなんでも悪役の魅力に欠け、見ている方をゲンナリさせる。

で、肝心のヒロインと半魚人との交流は、あっという間に始まり、あっという間に発展する。そこがジックリ描かれると勝手に思っていた僕は戸惑うばかり。

勝手に思い込んだこっちが悪いのだけど、ヒロインと半魚人との愛となれば、「キングコング」に代表されるような「異形との遭遇→交流→恋→闘い」という定番通りに進むのかとばかり思っていた。

「異形」と書いたが、半魚人、けっこう、格好いいのだ。イケメンなのである。「異形」でないのだ。体脂肪5%以下という見事な肉体で、まさかと思ったが、ヒロインと半魚人のセックスするシーンが登場する。

ああ、これは「性」の映画なんだ。僕の心はそこに照準を合わせはじめる。 そういえば、冒頭の入浴シーンのヒロイン。ストリックランドのセックスシーン。同居人の性的嗜好。同居人の「コーンは自慰行為をやめさせるために開発されたのだ」というセリフ。ゼルダの「男は油断ならない」。ストリックランドの「君の喘ぎ声を聞きたい」。映画は「性」で溢れていた。

しかし、映画は突如、ミュージカルになる。実に美しいシーンだ。心はファンタジーに照準を合わせる。

で、最後の最後で、半魚人は、神のような力を持っていることがわかってくる。心は宗教へ。

てなわけで、心の照準をどこに定めていいか混乱しているうちに映画終わってしまった。とにかく疲れました。いい意味でも。悪い意味でも。

[追伸] ・ストリックランド警備主任→「警部マクロード」のクリフォード刑事部長(声・加藤武)のJ・D・キャノンそっくり。「スコルピオ」を再見したくなった。

・一番好きなシーンは、車のウィンドウの雨の滴が流れて流れてひとつになっていくシーン。人の車に乗してもらったとき、僕もいつも、外を見るふりをして、雨の滴をひたすら追ってます。

・これを書いているとき、「シェイプ・オブ・ウォーター」がアカデミー作品賞を受賞したというニュースが入ってきました。みんな、心の照準をどこに合わせて見たのだろう。

(評価:★3)

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