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[コメント] 少女の髪どめ(2001/イラン)

難民保護は法より優先されると云い切った本作が21世紀の初年に撮られたのは象徴的な出来事だったと思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ホセイン・アベディニザーラ・バーラミに恋をしたのか同情をしたのか。ここを映画はとても微妙に、ほとんど謎かけのように描いている。私はどちらかと云うと後者を取りたい。動機が恋に片寄ると、恋をしなければ助けなかったとなるから。あんな娘まで肉体労働をせねばならないのか、という義憤は、急流での浚渫作業で増幅されている。

故郷に去るザーラを見送り、ホセインは満足して慈雨を受ける。ホセインはIDカードを捨て、恋からも捨てられたが、それ以上のものを得た。それはイスラム教ですらない(喜捨は教会にするものだ)。彼は個人として倫理を全うした。なんとそれは、貴方や私にもできることだ。

工事現場の工程が綿密に描かれるのが丁寧で、撮影も重厚で優れており、吹き抜けを飛ぶ鳩がいい。柄本明の息子と狂犬兄弟のようなホセインが好感、ザーラは福原愛に生き写しだった。ベストショットはホセインがザーラを女と認める件、カーテンが翻り鏡に髪をとくシルエットか映る突然のサイレント調。少女が去った後、鏡に蔦が巻きついているショットもとても美しい。

(評価:★5)

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