[コメント] 女殺し油地獄(1957/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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白稲荷の祈祷師というのが興味深い。谷晃の「白稲荷法師」は出鱈目風な拝み屋で、神道系なんだろうが何故か般若心経を唸っている。寝床の香川は朦朧としながら起き上がり「憑きものを落としてくれ」何が憑いているのじゃ「与兵衛(坂田藤十郎)が憑いている」白目剥いて身を竦めて「与兵衛にこの家を与えて娘を受け出せ」と坂田に云われた通り唸ると法師は「悪い狐が憑きよった」。
借金苦で失踪した坂田の父の鴈治郎が隣のアラタマ宅に来て、坂田が尋ねてくるだろうと小銭を置いて行く。そこに母の三好栄子が来て、小銭の束を床に落として彼女も預ける積りだったと知れる。いい泣かせで、無論こちらが元祖。両親の帰ったあと、隠れていた坂田は出てきて泣くが、しかしアラタマへ凶行に及ぶ。私には判り難かったのだが、両親が預けた小銭では借金は返せないのだろう。アラタマは油屋で油地獄。
借金は両親が返済してしまっており、憑きものの落ちたような、微動だにしない幽霊のような坂田。どんな馬鹿者も破滅寸前には自省するのだという処に味わいがある。坂田の衣装はイエローで統一されてきて、ここで派手な着物に血糊がつく。「甘ったれで見栄坊で、この世にひとつもええことせずオサラバや」。
序盤でご町内の面々は山上講に出かけて坂田はここで大暴れしている。山上講とは大和国金峰山(きんぶせん)にある蔵王権現に奉加・寄進・参詣する信者の集団で、そもそも本作で有名らしい。「立ったまま酒呑むなんて縁起の悪い」というアラタマの科白があった。♪ホネヤレホネヤレホネヤレヨというアラタマが子守歌唄う。劇伴は全編渋い。
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