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[コメント] 殺し(1962/伊)

推理劇ははなから放棄しているのだろう。映画小僧が愉しく撮ったのは二流の人生の活写であり、どれも味わいがある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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特に気に入ったのは休日を持て余した兵士の件。次々とナンパに失敗し、仕方なくひとりで観光、雨のなか路地にしゃがみ込み娼婦に囲まれる件の延々たるトラックバックなど好き放題の撮り方で愉しく、最後は夜のベンチでうたた寝、兵隊はいつも寝てやがると少年に笑われたりする。始終ニコニコしていて、存外いい休日だったのだろう。

同時刻の四回にわたる回想で四回降る通り雨がどれも美しく、登場人物を次々と使い捨てにするのもいっそ潔い。冒頭の紙屑からして、普通はどこかで脈絡つけるだろうに何もしない。やはり物語は放棄しているのだろう。こういう語りもアリだと押し通すスタンスに意欲を感じる。ただノアール調の終盤は型に嵌っていて、ここまでの奔放な語りより劣るし、全体を警察目線が覆うのは退屈。

(評価:★4)

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