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[コメント] 雲ながるる果てに(1953/日)

特攻映画の肝はその前夜の無礼講などんちゃん騒ぎにある、という物語手法を編み出した点だけでも本作は名作だ。高原駿雄朝霧鏡子が忘れ難い。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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もうひとつ、上官が馬鹿か真面目かという匙加減で特攻映画の全体の印象が甚だしく変わるのもよく判る処。本作の上官原保美岡田英次の対話(成功確率が)「まあ、二割ってとこか」みたいな数字の話が漏れ聞こえる辺りがとてもリアルで正直だ。報告を強いられる上官の頭に特攻兵を数字に落とし込む整理方法がなかった訳がない。後の好戦映画からはこういう描写は隠され、そのようにして虚構の神聖に近こうとしたのがよく判る。だいたい、特攻などする前に降伏すべきなのだ。当たり前だろう。

既に鶴田浩二は生真面目で木村功の逡巡と好対照をなしており、その後上記の虚構空間においてまるで神話の主人公のように振る舞うことになる一端が見て取れる。しかし本作で印象的なのは、利根はる恵の芸者とよろしくやっているが出陣に際しては遅刻せず熱心な高原駿雄や、良人の戦死を隠す戦友たちの言動の矛盾から少しずつ良人の死を知って大きな瞳を潤ませる朝霧鏡子だった。山岡比佐乃の教え子にまで特攻の候補と見做されるラストは恐ろしい。

(評価:★4)

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