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[コメント] 人生劇場 飛車角(1963/日)

佐久間良子は幾ら絶叫芝居をしても爽やかさが微妙に残りベトつかず、この余裕が全編を支えている。お千代坊の本間千代子は本作から芸名を貰った訳ではない。これ以前に出演作があるからである。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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撮影美術は最高。ロケハンも時間かけたのだろう、砂浜の撮影など退屈としたものだが本作は大いなる例外、この鶴田浩二高倉健の対決の岩場つき砂浜がやたら格好いい(一度派手な仰角になる外連味が好き)。二度舞い上がる砂塵は見事だし、アメリカの夜がエメラルド色に彩られるショットがひとつありメルヴィルを彷彿とさせる。

車夫のアクションで再登場する高倉の導入がとてもスムーズで面白い。ラストの坂道のセットも抜群で、逆光で捉えられた敵方がいい。そんななか、個人的ベストショットは二階部屋における鶴田と佐久間の別れの件で、箆棒な長回しにベストアングルを追いかけて動き回るキャメラがミゾグチとは違う世界を奏でてとても充実している。

話は前半佐久間、後半鶴田中心で展開する訳だが、佐久間が余りにも上手いものだから比較から何と鶴田が物足りなく見える。色恋で煩悶する鶴田は不足、後年の醸し出す色気をまだ欠いている。話自体も二股かけざるを得なくなった佐久間の心情が後半お座なりで追いかけられないのが不満で、ふたりが路上でばったり逢うラストは彼女を無理矢理押し込んだ具合になってしまった。美術が凄いので余り気にならないんだけど。

鶴田が月形龍之介に匿われる件では渋い部屋のセットのなかで青い薬缶がやたら目立ち、これはオヅの赤に対抗したのかも知れない。梅宮辰夫は彼が出ないと「人生劇場」にならないから出ているだけでいかにも半端。一方、鶴田と獄舎で隣部屋の田中春男は無理矢理ぎみの役をこなして巧みなもの。村田英雄は無難、大ヒットの主題歌はもちろん彼だが後年の吐夢版の鶴田の歌唱の方が好きだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] けにろん[*]

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