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[コメント] オーメン(1976/米)

「聖なるものには必ず悪魔がつく」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







エクソシスト』と並んで、観客にキリスト教を再認識させる力のあった作品なのだろう。悪魔の防止策はキリスト教しかないんだから。実際にそのような反響もあったらしい。どんな有りがたい説教より本作の恐怖はリアルだ。キリスト教は恐怖とともにある宗教だ、キリスト教徒とは悪魔を探している存在だと、はしなくも告白しちゃっている作品でもある。「聖なるものには必ず悪魔がつく」。いろんな感想を惹起する、力のある作品であることは間違いない。

とても印象的なのは、教会に連れて行かれるデミアンが車中で示す無茶苦茶な抵抗であり、教会に入れなかった神父が尖槍で突き刺されて死ぬショットだ。DOGはGODの逆だから悪魔的な存在、6はキリスト教で完璧な数字である7に至らないから不吉。ラストの父による子殺しは、キリスト教徒ならアブラハムによるイサクの燔祭を必ず想起するだろう。ローマ帝国再興(EECが名指しされている)の一端である警察に殺されるアブラハム、アメリカ合衆国に救われるイサク、とはとんでもない皮肉。アメリカの保守化、キリスト教原理主義が始まった70年代を象徴する作品と見える。

頑是ない子役をこんな役で使っていいのかなあ、という処はどうにも引っかかる。ここで笑え泣けと云われた通りに演じて、編集で仕上げられる。これが舞台だったらこの子は果たして同じように演じだただろうか。俳優を物扱いするのが映画(清水宏の名言でもある)、の最も極端な例だろう。その冷酷さは本作に相応しいのかも知れない。

グレゴリー・ペックも子守のビリー・ホワイトローもいいけど、さらに印象的なのは悪役だろうと登場してペックに寄り添い悪役のように死ぬデビッド・ワーナー。この名シーン、当初は硝子は上から落ちてくる予定だったのを、上手く撮れないため横から飛んでくることに変更したとのこと。このシーンと、リー・レミックが二階から突き落とされるシーンの細かなカット割りがとてもいい。

(評価:★5)

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