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[コメント] ちいさこべ(1962/日)

どですかでん』によく似た周五郎らしい人情噺で情緒ズブズブだが、こういう情緒こそ災害復旧には必要なのだと説得力のある江戸大火復旧物語。錦之助江利チエミの距離感がとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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中村賀津雄のやくざ者は単体では造形不足だが、彼が錦之助とこの頃面構えがそっくりなものだがら、ふたりはドッペルゲンガーの関係にあると見えてきて、するととても呑みこめるものがあった。これは演出意図なのだろうか。

珍しく真面目な役柄の江利チエミは好感度大。子守歌の節回しにさすがの才覚がある。依怙地を直していく錦之助の造形も、これこそが災害復旧に欠かせないのだと語って説得力があり、立派な御仁と終盤に向けて爽やかな気分にさせられる。作劇のテクとしてはありふれているが、こんな簡単なありふれたことが現実にはなされないのだ。ご町内のうるさ型に心を開くのが偉く、ラストのチエミへの告白も爽やか。ああ美しき周五郎の世界よ(『どですかでん』は本作がさらに煮詰まった具合である)。

この手の人情噺は脇役にとんでもない善人が登場するものだが、本作ではポンと五百両貸す質屋の藤原釜足と蜜柑盗まれて許すブレイク前の渥美清が担当、これらの件が終盤に畳み込まれ印象深い。木暮実千代も脇だがいつもに増して粋で吃驚した。

(評価:★4)

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