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[コメント] 獣人(1938/仏)

ゾラの設定は今やナンセンスだが、これがありきたりのメロドラマを強引に転覆させており、唖然とさせられる点『フリークス』にすら似ている。昔は悪魔を描きやすかった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アル中と殺人癖は何も関係もないのは現代では常識だがゾラの昔は違った。本作が撮られた当時はどうだったのだろう。旦那を殺さず愛人を殺してしまう男の悲劇な訳だが、これが特に人生に対する何の深みも呼び起こさないのがこの際凄い。当人は嘆くだろうが、我々は身につまされる処が何もない。当時の人はどうだったのだろう。いま観ると、ただただ、ナンセンスを目撃したという訳の判らなさが残る。期待の地平通り旦那を殺して愛人と逃亡していたら、退屈なメロドラマだっただろう。これは作者の望んだ感想と違うのかも知れないが、あり得ない展開が物語を脱臼させている点、秀逸と映る。

序盤の駆け足は長編の映画化だから仕方ないのだろうが、駅長の旦那フルナンド・ルドーの造形は弱く、最初の殺人の経過は軽すぎるし終盤もお座なりなのが残念。2時間あればもっと彼を掘り下げられただろう。同僚夫婦はいい味出しているが、そんなことより駅長に時間を割くべきだと思う。シモーヌ・シモンは後半どんどん良くなる。

(評価:★4)

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