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[コメント] 女経(1960/日)

市川崑の第二編が秀逸。ナンセンスな導入も望遠多用の室内撮影もお気楽な収束もみな見事、彼のよい処ばかりが出た代表作だろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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市川崑の作品は、序盤は抜群に面白いのに後半息切れするものが多い。物語が山場になるとそれまでの奇矯さが常識に収まってしまうのだ(『ぼんち』のような大例外もあるが)。彼は断片が得意で物語が苦手だったのではないか。だから推理ドラマを多く撮ったんじゃなかろうか。この切れ味鋭い短編を観て確信してしまった。コントにおける山本富士子との相性は抜群で、『黒い十人の女』『雪之丞変化』へと続くことになる。

増村作は若尾文子一流の毒婦もの。『女は二度生まれる』や『しとやかな獣』などの傑作に比べれば見劣りがするが、それらより先に撮られているのが重要なのだろう。本作のはまり役っぷりは60年代の若尾の活躍の予告編のよう。

吉村作は長編向きの題材でちと淡泊。しかし京マチ子が突然(突然過ぎるのだが)怪我した生徒に優しくなるのはちょっといい話。何で直ぐ病院に担ぎ込まなかったのかは大いに疑問だが。

原作は連作短編、私小説の放蕩話らしいが、映画にその含みなはく、女の金と恋との相克を年代順に並べた連作に仕立てている。一番若い若尾は金を取り、一番年増の京は恋を取る。これは好ましい並べ方だが、最後に艶笑譚系のエッチなクレジットが流れるのは何なのだろう。冒頭、若尾の件の前にあれば相乗効果があるが、心変わりをした京の件の後に出しては余韻が台無し、いけないのではないだろうか。

(評価:★4)

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