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[コメント] 戦場よさらば(1932/米)

名作文学も筋だけ追えば通俗の典型例だが、それでも第一次大戦の厭戦映画としてひとつの極端であり、撮られただけでも立派なのかも知れない(含原作のネタバレ)。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







なにせ戦争より女が大事と自軍から脱走する話な訳で、厭戦の極み、ドイツ軍からの脱走を嬉々として描くような平凡とはものが違う。だがそれだけにラスト、自軍の戦勝に鐘を鳴らして「平和が来た」と鳩を飛ばす強引なハッピーエンドはいかにもチグハグ。無論原作にそんな描写はない。

クーパー負傷における天井舐める主観ショットのギミックは愉しく、ソ連映画のような戦闘の象徴的表現連発に制作者のやる気は見えるのだが、安手の特撮がこの足を引っ張ってしまっている。当時はすでにホークスが特撮の名作を物している時代。ボーゼージ作としても『第七天国』から随分な後退だと思う。

大好きな原作で、ラストで茫然としたのが忘れられない。ヒロインの死は正に衝撃なのだ。あの激辛がこれほど大甘になるものなのだ。やはり小説は文体なのだと、比較して実感した次第。原作ではとても印象的な神父の造形(戦地で軽んじられていて、主人公との哲学的な対話が素晴らしいのだ)が映画では通り一遍なのも辛い。邦題改悪については「武器」でも「戦場」でもおんなじだと思うが(戦場から逃げるのだから筋には合致しているとも云える)。

(評価:★3)

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