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[コメント] 蟻の街のマリア(1958/日)

北原怜子(さとこ)氏について、蟻の街についてのリアルタイムの丁寧な記録で蒙を啓かれた。美術の素晴らしさは特筆もので、廃品回収業を綿密に再現して本邦50年代を伝えており、まずこれに胸を打たれる(含『愛と希望の街』のネタバレ)。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この偉人の論評などできるものではないが、映画の感想なら許されるだろう。千之赫子の儚い造形が素晴らしい。偽善者だ、聖人面するな、キリスト教なんて害悪だ等々、彼女は我々が宗教について思いつく悪口をすべからく浴びている。そして彼女は彼等に対して「すみません」と「ここに居させて下さい」しか云っていない。賢そうなことは一言も云わないのだ。立派な人だ。

千之は翌年、『愛と希望の街』で善意が裏切られる教師を演じた。オーシマは本作を意識したに違いない。

焼き討ちによる追い出しとは、キリスト教の主題になんと相応しいことだろう。都庁は本当にここまでしたのだろうか。「不法占拠」は敗戦直後の混乱を後々まで引きずる原因だった。、屋台の小父さんだって平時に戻れば市道の不法占拠と云われる。生き難い、世知辛い世の中だ。50年代はこの課題が先鋭化していたに違いなく、意義深い記録だと思う。

南原宏治の策士振りは作劇としてはやや無理筋だと思うが、現実にはこういうプロデューサーもいるのだろう。喜八さんまで登場する松竹人情劇オールスターに混じって岩崎加根子水原真知子が印象深い。丸山明宏は後に「ヨイトマケの唄」(64)を歌うに相応しいデヴュー作だった。芥川の音楽も素晴らしい。

(評価:★5)

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