[コメント] はだしのゲン ヒロシマのたたかい(1980/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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軍隊帰りの桜木健一、路上でナイフ振り回す特攻隊員のにしきのあきら、犬刺し殺してバラして生肉喰らう草野大悟など、前作より大人が活躍するので安心して観ていられる。草野のついでに殺される深見亮介が哀れ。映画デヴューでさっそく冴えている林泰文の弟分は、ふたりを銃殺し失踪してその後のフォローがないままシリーズ映画が終わってしまったが、いいのだろうか。
子供に向かって決まり事のようにガム投げるアメリカ兵がいい反復ギャグで、ゲンたちがMPとユー・アー・マイ・サンシャイン踊る件が笑える。進駐軍と並んで座っているパンパンの風吹ジュン(彼女はすでに演技派だ)に向けて子供らが「父ちゃん母ちゃんピカドンで、ハングリーハングリー」と囃しはじめて驚愕させられる。この歌も作者の記録なんだろう。ここまで差別されていたとはひどい。なお、ここも米兵のガムで解決する。
丘さとみは中年になっても演技が下手なのが愉しい。宮城まり子が病気で肥った具合だ。「負けた国なんだから我慢するしかない」というこの母の弁は存外に右翼的。一方、父の鈴木瑞穂の「一握りの金持ちだけが儲けるだけの戦争だ」という認識は戦中とは思われん的確さがあった。このふたりが夫婦とは60年代には考えられん組合せ。
朝鮮人だからと診察してもらえず原爆で父を亡くす財津一郎の朴さんは第1作からの人物で、誰も助けてくれないから金だけが頼りと語り、闇市で儲けた金を、お父さんに世話になったからとゲンに赤ん坊の治療費として貸す。在日コリアンのユダヤ人のようなエートスがそのように語られていた。
映画は終盤、赤ん坊の原爆症による死を追悼するのだが、これは型通りで弱かった。この後も話は永遠に引き延ばせそうだが、最後は単に「終」。金策が尽きたのだろうか。
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