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[コメント] 好男好女(1995/日=台湾)

侯孝賢のゴダール後継者宣言。しかしなぜ痴話喧嘩なのか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「重層構造の関連が薄い。故に失敗作」とどのサイトにも(Wikiにまで)書いてある。しかし、そんなこと云ったらアルトマンやウォン・カーウァイは失敗作だらけだ。かけ離れた構造が提示されれば、そこに関連を見出すのは観客の仕事だろう。

という処で私が見つけたのはゴダール。レジスタンスに痴話喧嘩が重ねられれば、それはゴダールだろう。『ベトナムから遠く離れて』や『ヒア&ゼア』などの対位法に、『メイド・イン・U.S.A.』や『パッション』などの痴話喧嘩が重ねられている。ならば、ゴダール映画はなぜいつも痴話喧嘩が始まるのか。それが私にはさっぱり判らない(笑)。あれは何なんでしょう。総体として平和な時代などないのだと語っているように感じているのだけれど。ともかく、この対比を本作は踏襲しているのは確かだと思われる。

マオイズムの評価を別にすれば(侯孝賢はどう考えているのだろう)、白色テロを告発するにあたってゴダールのフォームは的確だろう。モノクロ撮影は抜群にいい。青黒と白黒を使い分けたり、画像をわざと荒くしたり、モノクロ映画への愛情が感じられるのが嬉しい(ピンの合い過ぎに違和感のある『ニーチェの馬』などとはレベルが違う)。全くフォームの異なるカラー篇もとてもいい。殺されるジャック・カオの即物的な描写やバドミントン・コートでの女同士の殴り合いなど、ゴダール的に秀逸、空間処理が圧倒的で画として充実している。なぜ喧嘩なのか肝心の処が判らないが。

過去と現在を繋ぐ通路が2箇所ある(他にもあっただろうか)。ひとつは冒頭に引用されるモノクロ映画『晩春』。伊能静原節子の紀子に模されているのか。もうひとつは基本モノクロで描かれていた過去篇がワンシーンだけカラーになる談判の件。しかしその謎解きは難解。

(評価:★4)

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