[コメント] 花嫁人形(1919/独)
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伊丹万作もジャック・タチもチェコアニメの面々も本作が大好きで、影響を隠さず、この感性を継投していたのがよく判る。コメディは古びるとしたものだろうに、百年前の映画がこんなに可笑しいのは、そのためだと思われる。
人形劇とかアニメとの類縁性が徹底していて、前後のルビッチ作とも似ていない処があるが、人間機械論は通底している。人形の主題のほかも、組み立てられた箱庭が等身大セットになる冒頭、人形師の逆立ち白くなる髪の毛、馬車が人間のぬいぐるみ。
そして喋らぬ人形という主題はサイレントに相応しかった。オッシーの百面相面白く、早く人間だと見抜けよというニュアンスの含み笑いが絶妙。最強なのは彼女の修道士巻き込んだダンスで、私はこんな可憐なダンスを観たことがない。個人的には『戦争と平和』のリュドミラ・サベーリエワと比肩する。榊原郁恵が「ロボット」で狙ったのはこれだったに違いない。感性は継投されている。
男爵の甥のヘルマン・ティミヒは最初は女嫌いだったはずで、いつの間に変わったのか判然としないがどうでもいい。終盤は甥だけがオッシを人間と知らない、という極端な状況に至る訳で、この、突っつけば全部が爆発しそうな、ハイな時間帯が最高である。 男爵と甥の対話「初夜は大丈夫か」「取扱説明書があります」、全員太った修道院、持参金持ってきた甥に修道士曰く「その重荷を私によこしなさい」、人形師の弟子の一階への投身。冒頭の太陽は再び微笑み、人形師の白髪が黒く戻って映画は終わる。物語というより、ギャグのほうにオチをつけて終えるのが素晴らしい。
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