冒頭の二人かと思いきや三人いるそっくりさんとか、発砲現場の信長・家康直々の視察（そんなことする訳がない）の描写はとても奇妙でブニュエル好み。この延長でユーモラスな重喜劇が展開されれば面白かっただろうがそうはならず、タイトルから想像される範囲の物語に終始する。

「磔の覚悟で座っておれ」の銃撃戦、この描写の平板さは何なのだろう。全体をひとつの構図に収めるのにあれほど執着した黒澤が、フレームを反転させて敵方を捉えようともしない。暴れ馬から落馬する描写を省略するのにも驚いた。集中力を欠いているとしか思えない。

以下、信長が踊り出す件も虹のCGも、阿呆らしいというレベルまで後退して終わる。ひどいものだ。９０分の作品なら笑って済ませるが、３時間も付き合わされてこれでは困る。