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[コメント] ミュンヘンへの夜行列車(1940/英)

数珠繋ぎのホン快調に調子よく最後まで観せ切る秀作。すでに強制収容所の存在が鉄格子とともに示されているが、不思議と義憤に駆られるぜというニュアンスはなく、全てはラブコメのように運ばれるがラブコメにもならない。不思議な作品。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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偽の恋人が本物の恋に落ちる、というラブコメ王道を本作は全然予感させずに終わる。尻切れトンボの感想が残るが、加速がついた物語に振り落とされたようでもある。生真面目なマーガレット・ロックウッドの造形では、そうはなりようがなかっただろう。彼女はOPトップの主演だが、不思議とえらく地味な印象に終始する。

一方、途中で参入するベイジル・ラドフォードノーントン・ウェインのコンビは主演に比較して目立ちすぎだと思うのだが、それが気にならないのはこの二人がナチからひどい目に合うからだ。『バルカン超特急』を予感させながら脱線して駅に長々停車して、太っちょの女駅長ほかにゾンザイに扱われ続けるドタバタ連発。ついには開戦したとナチ将校に云われてぐうの音もでなくなるのだった。

画で語るキャロル・リードにはまだ十年早いのかも知れないが、ラストのロープウェイは見事に画で語っている。両側の客車が均衡を取るという我々がよく知っている原理が生かされるため、観客はこのオチを誰しもが納得してしまうのだった。あと、視力検査で暗号は格好いいネタで、読んでいるだけの扇型の視力表が珍しい。当時はああいうものだったのか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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