コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 祇園囃子(1953/日)

話は平凡な花柳小説だし、撮影はステディでシネフィル好みの狂ったような構図や長回しはもうない。それでもさすがミゾグチという充実感があるのは、俳優から色んなものを炙り出す演出によるものに違いない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







浪花千栄子菅井一郎の丁々発止は、作品を一流の政治映画にしているし、進藤英太郎の不吉な嫌らしさは、漱石「道草」の叔父もかくやと思わせる。口の端に血を垂らす若尾文子は、ミゾグチ映画のエッセンスを凝縮したような名カットである。

赤線地帯』で若尾文子春本富士夫を袖にするときの理屈は、本作の冒頭で木暮実千代田中春男を追い出す理屈と同じ(結婚の約束など座興に決まっているではないか、という)。お姉はんから教えてもらわはったんどす。本作の美しげなラストは、ここから振り返ると、商売上のしたたかさへの決意ととれる。彼女らに表社会の美しさなどありはしないのだ、と。この微妙なニュアンスもまた、小説では表現できない映画の演出の力である。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。