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[コメント] 善き人のためのソナタ(2006/独)

本作で面白いのは周辺描写の細部であり、本筋は弱い。だいたいこの温水洋一みたいな小父さん、非道いことして来たのに何で罪に問われないのか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作で面白いのは周辺描写の細部。40時間の尋問とか盗聴とか隣家への口封じとか東西冷戦の悪夢描写の数々。「拘留して裁判はせず、10ケ月目に突然保釈するのだ。すると彼は活動を必ずやめる。タダで成果が得られる」。食堂で同席した若い部下のアクネドート(ホーネッカーへの皮肉)を寛容に聞き流す上司の件はブラックだ。 比べて本筋は面白くない。女優の妻を中心に物語は展開し、彼女は大臣に強姦され、盗聴者に横恋慕され、最期は密告者として庇われながら事故死する。別にそこに正義がある訳ではく、盗聴者も正義に駆られた訳ではない。女優のファンだから何となく見逃したその累積だ。それはリアルだが、正義はない。

この温水洋一みたいな盗聴者の小父さん、40時間の尋問による犯人でっち上げを連発してきたのだから、地下室で封筒開封ぐらいのイジメでこの罪が償われたかと云えばそんなこともあるまい。官僚への罰がユルいのは洋の東西を問わないのだなあという印象が残る。

洒落たラストはニューヨーカーの短編みたいなものだが、彼がこれで「報いられた」かどうかは決まっていない。作家が彼をどこまで理解〜誤解するかは書物を読んでみないと判らないだろう。散々に貶してあるかも知れないではないか。だから別にこれは感動のラストではなく、早とちりの自己満足めいている。

なお、冒頭の表記は「国家保安省(シュダージ)への協力者10万人、密告者20万人」。再見。

(評価:★3)

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