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[コメント] 北辰斜にさすところ(2007/日)

旧制高校生など特権階級を英雄視しても仕方ない気分にさせられるが、『嗚呼 花の応援団』の先達と思えば親しみが沸かないでもない。三國らしい切々たる収束はとてもいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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大正15年、五高(熊本)対七高(鹿児島)、野球対抗戦の観客3万人、七高3連勝、ハシャイで騒いで五高激怒、七高応援団立て籠もり。「耐えざるを忍ぶも男ばい」の仲裁。三國連太郎の回想、入寮に際して先輩の緒形直人の「大きな馬鹿になれ」という方針、これが実人生ではとても難しいことなんだと語られる。やたら褌姿になり寮対抗で夜中に喧嘩。

ここには『けんかえれじい』(先輩に「度胸つけるためには校則をひとつずつ破らにゃいかん」と指示される)や『嗚呼 花の応援団』の世界観が蔓延している。これがもっと綿密に描かれたら面白かっただろう。満州事変に際してもまだ自由の校風は健在だったと語られる。

後半はユルい。戦前篇で野球の回想は特になく、三國がどれほど名選手だったのか判らないので、爺さんになった彼がなぜ尊重されるのかよく判らない。郵便局員がバイクで投函したら郵便が届き、ジェット機が着陸したら鹿児島着、みたいな真面目な演出が何とも云えない。捨てカットによるリズムということもあるのだろうが。

しかし、百周年の両校記念野球大会に、戦死した学友たちが続々登場してぱたぱたと終わる収束はとても感じが良かった。三國が軍医として参戦して、転戦のため救えなかった先輩で負傷兵の緒形直人もここにさらっと再登場する。緒形の笑顔で三國は許しを得たのだった。見事に三國らしい反戦映画になっていた。

神山繁が笑いっぱなしの造形で驚き。赤褌の踊りも見れる。北村和夫鈴木瑞穂の再会など、話とは関係なしに感慨深いものがある。タイトルは七高の校歌(応援歌)で「ホクシンナナメ」と読む。

(評価:★3)

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