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[コメント] 我等の生涯の最良の年(1946/米)

ハロルド・ラッセルのエピソードはいいものだが、冒頭に義手で煙草に火をつける件が最良であり、以降はどんどん常識的になる。『典子は、今』は本作の影響大だがこれなら典子の方がいい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そしてあとの二人はどうでもいいような話だ。他人の結婚式で再び燃え上がるテレサ・ライトダナ・アンドリュースのラストは何かバカバカしい。だいたい何でアンドリュースはアバズレ風なヴァージニア・メイヨと結婚したのだろう。軍隊に行く前は人格が悪かったということなんだろうか。

いくつか疑問が残る作品である。フレドリック・マーチは銀行に復帰して「復員者援護法」なる融資の法律の運用を任される訳だが、原資の提供も利子補給もない法律らしく、マーチは最初は担保がなければ貸せないと渋っている。そんな法律でいいのかと思うが、どうだったんだろう。人柄をみて融資を決めて頭取と関係が微妙になるのだが、映画がこの件のその後について何もフォローしないのは失策に見える。

また、ラッセルの負傷をみて「アメリカは参戦なんかしなくて良かったんだ」と語り、ダナ・アンドリュースにぶん殴られる紳士がいたが、彼はどういう素性の人なのだろう。コミュニストなのか、それとも保守思想なのか(外れたアメリカ国旗のバッジが見えた)。当時の観客はこの遠回しな説明でそれが判ったのだろうか。

最大の疑問は、マーチの息子は原爆の落ちた広島に行ったかと問い、マーチは「行ったが特に気づかなかった」と答える件。広島の惨状が目に入らないはずはなく、これはあり得ない話だ。作者は惨状を知らずに書いているのか、それとも当局とともに隠蔽しようとしているのか、いずれにせよこの大ヒット作はアメリカ人が原爆の被害を過小評価するのに貢献したはずだ。

撮影美術としても冒頭の全方位が見える窓が愉しくていい。これは本物なんだろうか。マーナ・ロイのコメディはとてもいい。コメディで云えば、マーチとアンドリュースがバーで面会する後半の件、最初に失業中のアンドリュースが銀行員のマーチに「金を貸してほしいのか」とジョークを云い、喧嘩別れする最後にアンドリュースが札を机に投げて「俺の奢りだ」、結局金を出したというのが面白かった。

(評価:★3)

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