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[コメント] コクリコ坂から(2011/日)

理事長に介入し、彼を「閣下」(!)と呼ぶセンスの物凄さは何というべきか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







個人的な見処は寮の存続運動。「閣下」は何だが、少数派の勝利は気持ちいい。時代的には寮にピケを張るのが常道だっただろうに、その対極を行っているのが興味深い。どういう含みがあるのだろう。例えば集会に教師が入ってくると賛成反対の両派が一緒になって歌を歌い出し、教師は退出する。あれは何だったのだろう。

脚本は宮崎駿であり、寮の件は原作にないらしいから、当時を知る彼の見解だろう(例えばLSTに乗って朝鮮戦争で戦死した船乗り(保安庁職員)という裏昭和史を持ってくるのも彼らしい)。時は東京オリンピック前年で、当時の東京の路地裏の風景も描かれる訳だが、あれらが失われたのは正に東京オリンピックに係る浄化政策によるものだ。寮撤去批判はこれと関連づけられていると思われる。

その他は退屈。ありふれた出生の秘密噺、終盤に善人が大挙して出てくるジブリ・パターンは安心して見ていられるがそれ位でいいのか。前作のような手抜きはないが、画の平凡さは相変わらず。積み重ねるべき細部がまた下手糞、自転車を追い越す自動車が少しも膨らまずに走る画は奇妙だし、フライを揚げてからキャベツを切り始めたらフライが冷めてしまうし、ガリ版の鉄筆であんなにスラスラ書ける訳がない。手嶌葵を再登用する律義さは好ましく思った。

(評価:★3)

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