物語は『罪と罰』を下敷きにしているが、ソーニャ＝二階堂ふみの発言に宗教的な根拠があるはずもなく、持っているのは無根拠な「がんばれ」という言葉だけなのだ。福島の被災者に我々の大多数ができるのも、頑張れと声をかけることぐらいである。この貧しさを本作は抱きしめている。

「一度人生にケチのついた人は、自分を捨てて頑張るしかないの。これは義務よ」。この科白に込められたパッション、あのシニカルな温がこの科白が吐いた深さを想う。希望とヤケッパチがない交ぜになったラストは、いろんな感想が沸いた。「被災者をお風呂に入れないでね」など、云ってはいけない科白は、個人的な絶望を普遍的なものに引き上げる力を持っている。素晴らしい。