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[コメント] 骨までしゃぶる(1966/日)

わし尾元也の傑作としても賞賛されるべき痛快作。本邦において法律は常にタテマエに過ぎないと抉って止まない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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女主人公がドツボにハマるのは廓ものの定跡であるが、本作はこれを逆手に取る。後半に向けて桜町弘子はどんどん美しくなるが、それは理性によって美しくなるのだ。これは画期的な演出と思われ、観ていて嬉しくなる。

遠藤辰雄の警察署長は、人権保護は日英同盟の要請によるものだと渋々ながら認める。これは「恩に報いない奴は人間じゃねえ」という三島雅夫と激しく対立している。そして警察へ駈け込めば勝ち、やくざ衆に見つかれば負けの悲喜劇世界が展開される。まことに法律は武器であり、法律の暗誦で三島をとっちめる桜町は最高に痛快だが、法律を知らない者は救わないと逆に炙り出してもいる。本邦において法律は確定申告の節税ノウハウのようなものなのだ。人権に背いた契約は契約ではない、という欧米の常識を持たない三島雅夫は現在も蔓延している。

明治において救世軍がどのような存在だったのか、監察制度とは何だったのかも本作は明快にしている。冒頭の儲け話に思わず笑いだす人買いは誰だっただろう。とても印象深い。三島は十八番の役処であり、三原葉子菅井きんのトリオは絶品。久保菜穂子はやたら別嬪だ。夏八木勲のデヴュー作。

(評価:★5)

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