[コメント] 獄門島(1977/日)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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そうは云っても俳優単位ではとても豪勢。網元らしく黒光りする肌と真白な歯をみせて無茶苦茶をする東野英治郎、言葉に詰まって拳で胸を叩く佐分利信、泣きながら寂しく笑う司葉子。アイドル時代に狂女役演じる浅野ゆう子は役者根性を感じる。当人には黒歴史だろうが。
三つの偶然が重ならなければ佐分利は凶行に至らなかった、しかも佐分利のなかで条件成立が判明したのは映画の冒頭のシーンだった、というのは、とても余韻の残る優れた構成のはずなのだが、これがイマイチ薄いのは、本家の跡取存命を偽る三谷昇が怪し過ぎるからだ(松葉杖捨て去るコントですぐ嘘と判る。これ、コメディとしてなら面白いのだが)。観客は誰もが三谷は嘘をついていると知っており知らないのは佐分利たちだけ、ではサスペンスにならない。間抜けな佐分利を客観的に憐れむことはできるのだが、そんなことをしても仕方がないだろうに。
贅沢な和服での逆さ吊りは大して美的とも見えず、釣り鐘のなかに釣り鐘があってどうなのかよく判らず、荻野目慶子の『砂の器』も、司が大原麗子の母親だと判明する終盤も、阿呆らしいほどセンチメントで薄い。
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