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[コメント] スプリング・ブレイカーズ(2012/米)

コリンの狂ったアメリカ潜入記はここでも徹底している。何ちゅう自分探しだ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まあ何というか、アメリカのお嬢さんたちの自分探しが展開される訳で、それがバカンスの享楽という貧しさが抱きしめられている。MTVな撮影編集が守旧派の私にはどうにも退屈なのだが、この内容ならこの手法で撮るべき必然性がある。プールサイドのピアノで奏でられるのがブリトニー・スピアーズという貧乏臭さも、一方でお祈りしたりお婆ちゃんに電話したりとお嬢さんたちが妙に真面目なのも何とも云えない。要はアメリカそのものなんだろう。

突き抜けたラストは秀逸。ジェームズ・フランコは自分探しのための踏み台でしかなかったと判明するのが素晴らしいし、ダイナー襲撃が本物の拳銃に発展してしまうのがいかにもアメリカ。本作は正にアメリカの病理を抉った作品であるのだが、そんな見解を生真面目に表明するのが馬鹿らしくなるほど突き抜けている。脱落者ふたりがバスで見せる鬱屈との対照が曰く云い難い。だいたい、ギャングの衝突などという話にリアリティがあること自体もの凄い。覆面コスチュームは素敵でプッシー・ライオットを想起させる。

冒頭、宗教の授業でオーティス・レディングの「Amen」が唱和されたあと、コリント書が読まれる。「神は真実な方です。あなた方を耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練とともに、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えてくださいます。ワオ、神ってクール!」ラストに重ね合わせれば、まあ何というイロニーだろうと思わされる。

今にして思えば『ガンモ』はラストベルトの内情暴露だった訳だが、本作はこの宗教の授業の直前に公民権運動の授業の件があるので、中西部の狂信的背景ということでもない。舞台はフロリダ。コリンの狂ったアメリカ潜入記はここでも徹底している。

(評価:★4)

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