テレビ制作とネットと、軽薄の二乗で事件を攻める方法は滅法面白く、これだけを中島哲也風に徹底させたら、とんでもない傑作になったんじゃなかろうか。

残念ながら作品は、ジコチュー美人の生態というありがちな展開に陥り、この造形が二時間ドラマ並みに類型的、真犯人も唐突、殺人の件は陰惨に過ぎた。結果、匿名加害者というテーマからの解離が甚だしく、なんじゃ判らんとっ散らかりに終わる。『ハリー』のように、最後まで主題を大事に膨らませてほしかった。真犯人探しより別に描くべきことがあったのではないだろうか。

俳優はいずれも好演。ラス前の光の交換は美しい。好感が残るが、果たして好感が残るべきテーマだったのだろうか。主人公が最後に語る「いいことありますよ」が契約職員にどのように伝わるのか、よく判らなかった。