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[コメント] 山河ノスタルジア(2015/中国=日=仏)

唐突かつ脈絡なき飛行機の墜落は、この監督、確か『長江哀歌』でも宇宙ロケットを突然発射させていたのを思い出した。この趣味は変わっていて面白いけどイマイチ動機が判らない(含『母なる証明』のネタバレ)。
寒山

**ネタバレ注意**
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掴みは三角関係と貧富の差という、邦画でも少なくとも千本はあるだろう余りにも古典的な金色夜叉の変奏。見所はそれが中国を舞台に展開されていること、しかも中国の西洋化が相当露骨に比較されることだろう。Go West(!)にのってダンスする冒頭からそれは明らか。ドイツ製の車(中国製は駄目なのかとタオは口走る)とか、爆音テクノ(このディスコで経営者ジンシェンはタオを射止める)とか、儒教の葬式作法を知らない息子とか、餃子喰って「ベリーナイス」と口走る息子とか。この辺り相当に図式的であり退屈である。中国は欧米から学ぶことが別にあるだろうと嫌味のひとつも云いたくなる。

ただ、豪州育ちで英語しか喋れず、学校で中国語を学び、父親の中国語と会話ができない、という成長した息子の悩みはリアルなものがあった。尾美としのりみたいなドン・ズージェンが良好でマザコンを演じて無理がない。自由の国アメリカに毒された父親を捨てる際、口走る「俺は自由に生きるんだ」というフレーズが複雑で印象的。もっとも、父親の切り捨て方にジレンマがなさ過ぎなのは喰い足りない。三角関係で病気のサンミンが途中で登場しなくなるのも金色夜叉が徹底されず肩すかしだった。

吉行和子さんみたいな虹色セーターのチャオ・タオは好感度大。ラストのひとりダンスは『母なる証明』を想起させるが、これは当然意識されていて、あちらのアイロニーに対してユーモアで対峙した、ということなのだろう。餃子を準備し息子の帰還を待ちつつ、再びGo Westを踊る初老に至った彼女は、四半世紀を経て西洋化を受け入れる心の余裕を得た。それは中国そのものなのだろう。このラストは嫌味を云うのは野暮と思わせる力があった。

なお、私は儒教の葬式の描写を観るのは初めてで、とても興味深かった。伴奏がやたら暢気な曲を流すのだ。内容は深刻なのに音楽は暢気な清水・小津映画はこの影響なのかも知れないという発見があった。馬鹿でかい線香も印象的。あれに火をつけないまま線香立てに刺すのは正しい作法なのか、それとも息子の手落ちという意味なんだろうか。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)disjunctive[*] 水那岐[*]

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