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[コメント] 弁護人(2013/韓国)

「中立」を認めない非芸術映画
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







弁護士の仕事は基本的人権を護ることだ。それが建前だろうが、憲法に書きこまれていれば、護られねばならない。戦争関連法に反対するのもそのためだ。戦争は国民主権を制限するのだから。法律がそれを制限するなら、法律が間違っていないか疑ってかかる。なぜなら憲法が上位にあるから。

本作はここの処を、軍政下というひとつの限界状況において丁寧に述べている。先輩弁護士のチョン・ウォンジュンほか、弁護士たちは殆ど地下活動をしているようなものだ。さもなくば金儲けに走る。この前半がリアルで、印象に残る。外国人記者クラブというものがどういう役割を果たすのかも、よく判る。

本作で取り上げられた1981年の釜林事件は、2014年(本作公開の年)に一部の人が冤罪を勝ち取っている。映画が尻切れトンボなのは事件がまだ終わっていないからだ。これは芸術映画ではないとソン・ガンホが注釈を述べているのもこれに係わっているのだろうが、むしろリアルタイムの生々しさが伝わってくる。

本作は戦後直後の山本薩夫のジャーナリスティックなセミ・ドキュメンタリーの伝統を継ぐものだ。韓国の保守派の者は本作を批判している(日本でもこういう作品には、北朝鮮寄りとか云う輩が必ずいる。そんな訳、ないではないか)。「中立」で描かれた映画ではなく、旗色は鮮明だ。観るには労力を要する。しかし労力を使って、自分の価値観を研磨して観ねばならない。一体、「中立」なんてあるのか。本邦でも、かの日本会議の名誉会長は元最高裁判所長官ですよ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)シーチキン[*] 袋のうさぎ

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