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[コメント] 国際市場で逢いましょう(2014/韓国)

広場に貼られた人探しの貼紙の画が圧倒的、胸が詰まる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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興南(フンナム)撤退作戦(無知をさらけ出すのだが、あれは何でアメリカ軍が撤退したのだろう。今なら考えられない)、ドイツへの出稼ぎ労働、ベトナム戦争の商人と、忘れたいような実話が詳述される。印象的なのは夫婦が公園で議論している最中に国家が鳴り出し、ふたりが議論を中断して起立する件。主人公たちはほんの最近まで、軍政の歴史に振り回され続けた。この映画が2010年代に大ヒットしたこと自体、韓国の現状を反映している。日本では考えられない。厭戦映画の大ヒットは1950年代の出来事だもの。それに、本邦にブラジル移民の劇映画ってあるか?(ハワイはあるが)

南北離散家族再会の件は、日本の中国残留孤児(いい大人を孤児と呼ぶ感覚にはいまだに違和感があるが)を思い出さざるを得なかったが、これだって真正面から取り組んだ劇映画など知らない。現代史を真正面から描いたということだけで本作は意味があるし、もしかしたら、その自由度は羨むべきなのかも知れない。広場に貼られた人探しの貼紙の画は圧倒的で、胸が詰まる。

「こんな目に合うのは私たちでよかった。子供たちじゃなくて」という主人公の独白は、現代の依怙地だと子供らに厭われる姿に重ねられる。切り口によっては嫌味になる処だが、そうならないのは主人公が背負わされたハード過ぎる歴史に依るものだ。かの儒教国家でも老人が疎んじられる現状も垣間見える。

妙にいいのが夫婦のドイツでの馴れ初めの件で、キム・ユンジンの軽いコメディエンヌ振りがきまっている。オ・ダルスもギャグがしつこくないのがいい。ともすればお泪頂戴に流れる処を、このふたりが韓流ならではのヘンテコなコメディでバランスが取れている。だから映画のつくりは『三丁目の夕日』程度だが構わない。好みは別れるだろうけど。ただ、著名人を端々に登場させるニュアンスは判りかねる。なお、邦題はぎこちないが原題も「国際市場」。

(評価:★4)

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