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[コメント] タレンタイム〜優しい歌(2009/マレーシア)

善意は判るが余りにも平凡
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







不思議なことに、本作を観た直後に二度、マレーシアの人と遭遇した。一度はバーで隣席になり、一度は路上で道を尋ねられた。本作を観ていなければ、英語を駆使する彼等がどういう人なのか見当もつかなかっただろう。マレーの現状についてとても啓蒙された。この点、観る価値のある映画だった。

だが、良作だが傑作ではない、ということが映画にはままある訳で、私的には残念ながら本作もその部類。骨格が本邦80年代の学園ドラマそのままなのがまずキツい。漫画のように強引な校長とか、やたらオナラするマヌケ教師とか、既に記号と化したような面々を見ると厭になる。冒頭の講堂に電気が灯されるエンプティショットはいいなと思ったのだが、こうなるとあれもすでに記号化されている手法かと思えてくる。

以下、収束のギターの少年に胡弓の少年が寄り添うラストまで、挨拶しない少年への失礼と後悔とか、暴行で肉親を殺された母の勘違いとか、病室の亡霊の収まりの悪さとか、善意は判るが余りにも凡庸。失礼ながら、意余って力足らずという感想である。

「すべての粗悪な芸術は、善良な意図の結果である」とオスカー・ワイルドは云っている。これは云い過ぎだろうが、善良な意図から優れた芸術が生まれるのは稀なことだ。善良な意図とは基本平凡なもので、芸術はディユオニソス的な悪意の味方をするものだ。それなら無理に芸術にすることもない、むしろドキュメンタリーで扱うべき世界だろう。ただ、その稀な傑作をファンは待ち望んでしまう訳で、本作は残念としか云いようがない。

(評価:★3)

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