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[コメント] 夫婦(1953/日)

年の瀬に納豆売る少年と、正月に三國に凧を電線に引っかけられて泣く少年がいい。この子は同じ人物だっただろうか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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女を弄るに長けた水木脚本、本作では上原謙三國連太郎の男ふたりを弄り倒している。冒頭、町内のお祭りに連れて行かれそうになる上原がすごい。殆ど夢遊病者の造形だ。自分の思う処の美しい感情ばかり喋り倒す三國の自己中振りもまたすごいものがあり、この両名、実に現代的な一本ネジの外れた人物である。

こんなふたりが同居すれば事件が起きぬ訳がない、という、傍から見ると実にバカバカしいが間に挟まれた杉葉子には堪らないコメディ。見舞いに来た女子社員と五人でうどん食べる件の目線の交錯など抜群、後にひっくり返されるラーメンと対照されている。

終盤の妊娠の件は全体から見て唐突で、この運びは上手いとは云い難く、名手水木もまだ熟達途上という印象はあり、これが本作の評価を下げているのかも知れない。しかし突風吹きすさぶ公園と産婦人科前のやり取りの殺伐感がもの凄く、ナルセ映画でも破格だろう、ここまでのユーモア劇からの転調を抜群のものにしている。人生、転調と試練は突然やってくる。のほほん上原の突然示す優しさが心に残る。

当時の住宅(貸家)難はどれほどリアルなのか、それともネタというだけなのかは気にかかる。小林正樹が婚約者の名前を云う度に10円貰う岡田茉利子が面白い。斎藤一郎の余りにも小津調の音楽が優しくていい。端役の子供への拘りもまた小津調だろうか。

(評価:★4)

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