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[コメント] 孤獨の人(1957/日)

手袋だけの殿下。ラングのノアールの手法じゃないか。本邦の言論の自由の限界を示すやんごとなき描写に慄然とするばかり。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







不気味を定着させるために用いられる手法で殿下を描く。すると当然に、殿下の存在自体の不気味さが浮かび上がってくる。時は風流無譚事件(60)前夜。右翼のテロルが基本健全な文芸映画をここまで抑圧していた訳だ(『拝啓天皇陛下様』でも同様の描写が踏襲されている)。これは映画人たちのギリギリの抗議なのではなかったのだろうか。そう思わざるを得ない。

原作者はアホ右翼だが、この描写を好んだだろうか。たかが修学旅行と無断外出が事件になっちゃうってのは凄い話ではある。作劇の構成は本筋と関連の薄い客寄せパンダの津川・月丘が実に邪魔、冒頭の暴力教室の主題がたちまちどこかへ行ってしまうのもおかしかろう。本作の価値は手袋描写に尽きる。

(評価:★4)

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