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[コメント] 三度目の殺人(2017/日)

ドローンの空中移動撮影は見事な構図。比べて接見室の件はあれこれ工夫しているが面白い画はない。クロサワはオーバーラップ一発で決めたよ(含『天国と地獄』のネタバレ)。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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件のオーバーラップへ向けて、福山雅治役所広司の類縁性が延々語られる。疎遠な娘、ペットのお墓、雪合戦の幻想から広瀬すずの自供阻止まで。三船敏郎山崎努が似た者同士であることをワンショットで示したクロサワに比べればもっさいのだが、それはともかく、ラストで空を見上げる福山は、裁判に真実を求めなかったという意味で、コロコロ自供を変えた役所と同じ立ち位置にいると判明する。

しかし、福山にとってこのスタンスは、裁判とは被告に有利に計らうものだという冒頭からのシニカルさと大して違っていない。福山の成長物語という予期された通俗を脱している訳で、本作の興趣はここにあるだろう。このシニカルからは、広瀬の最後の「誰が裁くんですか」、あるいは満島真之介の「生まれなかったほうがいいなんて人はいない」という真っ当な発言ははじき出されている。生まれてこなかったほうか良かった人間がいる、という認識をも福山は役所と共有しているかのようだ。

考えさせられる、ぐらいの着地点を作者は目指したものと思われる。私はカント主義者だから(笑)、この収束はそんなものではない、大いなる違和感がある。広瀬は自供すべきだった。この忖度で一生救われないのは、悪を抱えた広瀬である。十字架が出てくる。自己犠牲ぐらいの意味合いで使ったのだろうが、大多数のヴェネチアの観客の顰蹙を買ったのではないか。キリストはそんなアイロニーで十字架にかかったのではないぞ、と。

クライマックスのこれまた接見室の告白、観客はもう事情は呑みこめているのだから、あんな長科白で処理せず画で見せるべきだと思う。裁判の落とし処という主題は大岡昇平の「事件」(映画は未見)に届かず。訴訟経済も困るが、それよりあんなに怪しい斉藤由貴の供述に疑念を抱かない裁判はおかしいと思う。

中盤までの謎かけは良好。タイトルに関しては、三度目の殺人は役所の死刑突入なんだろうが、すると血まみれの広瀬は何だったのだろう。役所足す広瀬で一と数えるのだろうか、などと憶測を語るのは作者の術中にハマる気がするので止める。

(評価:★3)

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