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[コメント] 陽炎座(1981/日)

ツィゴイネルワイゼン』のように恐怖譚を地道に綴るでもなく、『カポネ』のように冗談で弾けるでもなく中途半端で、漫然と繋げた没フィルムの束を観せられたような印象。実際それが狙いではないのだろうか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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序盤からジャンプカットのバーゲンセール状態。松田優作一流の冗談芝居はシリアスになりようもなく、冒頭の橋の上のひとり芝居からして原田芳雄の摸造っぽく、中村嘉津雄も冗談のよう。

死んだのやら生きているのやらの展開はまるで前作から話が続いているかのようで、最後は生きている優作が死んだという手紙が届いたりする。「おイネさんが私の夢を覗いて手紙を書いたのです」「夢の手紙を信じていいのですね」「信じてください。さよなら」みたいな泉鏡花。子供が大人の魂盗んで女と引っ付ける、という件は面白そうだが徹底されなかった。

原田の股間から取り出される松茸の俳句など、ギャグもベタ。エロ人形を珍重する件は深沢七郎の小説にこんなのがあった。アナボルと間違われるアナーキストの原田が乞食に小便引っかけるのは、右翼の清順らしく左翼を馬鹿にするのだろう。

田舎芝居に「新派」の優作が敗退する陽炎座。樽の中からホオズキ吐き出す大楠道代がベストショットか。大楠が『BU・SU』(87)で富田靖子の踊りの師匠になるのは本作が前振りだったか。

音楽はデキシーランド基調で演奏者には富樫雅彦がいる。やはり志向はすでに『カポネ』にあったのだろう。私は『カポネ』が好きだから、本作は過渡期の作品と考えたい。再見だが封切時の二番館では寝てしまった記憶。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)DSCH けにろん[*]

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