コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] カポネ大いに泣く(1985/日)

封切時にシネコンじゃない、昔の大きな映画館で観た。浪花節が大劇場でかかった最後の映画だろう。♪何が何して何とやら。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「魂に呼びかけるんだ」とショーケンは唸る。ナルセも描いた桃中軒雲右衛門は右翼的な人物であり、彼を彷彿とさせる人物に活躍させるのは『けんかえれじい』の監督らしい(雲右衛門は明治天皇の前で演じたから俺も大統領の前で演りたい、とショーケンは云う)。私など、年寄りの趣味は仕方ないなあと思わされる。

1985年はプラザ合意の年。アメリカ渡航は日米経済摩擦が含意されており、KKK団が日本移民を襲うみたいな描写にはある種のリアリティがあったのだ。戦前アメリカの日本人収容所が再現されている映画は余り記憶にない(木下の『山河あり』にあったかな)。清順は意外に社会派である。これはいつものことだと思う。

田中裕子は山田五十鈴ばりに三味線を弾いている(ように見える)のが偉い。萩原健一は彼のなんとも云えんブルース歌唱と近似していい味だしている。ベストはメリーゴーランド背景の河内音頭。浪花節に合わせる即興ジャズもチャップリン(対KKKで赤狩りを皮肉っているのだろう)も麗しい。

冒頭のジュリーのシルエットからもう、本作は安物喜劇の撮影照明で参りますと宣誓されており、ルパン三世の世界に近い。これもいつもの清順映画だ。玉乗りする田中裕子の幻想的なショットや、指詰めの代わりに真っ赤な菊を切る、みたいなショットがらしくていい。懐かしい映画。再見。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。