[コメント] 男性と女性(1919/米)
愉快な原始共産制を描いてキートンと共振し、収束は『ローマの休日』を想起させる。トランポは本作を参照したに違いなく、その主張は本作により明快に見える。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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貴族生活を描写した前半は退屈。豪邸の美術や入浴シーンなど、当時の観客は喜んだのだろうけど。遊覧船転覆ももうひとつ撮れていないが、10年代ならこんなものだろう。
それが孤島定住の中盤になると途端に面白くなる。ブー垂れていたグロリア・スワンソンがいきなり狩りを始める展開が爆笑もの。ぐだぐだ怠けていた貴族連が嬉々として狩猟生活に勤しんでいる描写が愉しい。動物の横行とか奇妙な発明品とか、キートンとの同時代性を感じさせる描写の連発なのだ。トーマス・ミーガンのバビロン王への先祖返りという主題は特に求心力がない。それよりも、このイギリス貴族の価値観が白紙に戻る離島はアメリカである、という理想を裏テーマに掲げてあると見るべきなんだろうと思う。
理想は貫徹されず終盤は元の貴族社会に戻る。慇懃な執事に戻るミーガンの慎ましさに何を読み取るべきなのか、応えは巧みに観客個々人に委ねられる。私は『ローマの休日』のラストを想起した。スワンソンの胸に去来するものはヘップバーンのそれと同じだろう。『ローマ』でのコミュニスト・トランポの主張は、本作の愉快な原始共産制と呼応しているように見える。
美文調の大仰な字幕は時代のものだが「猫が死んだら追悼しない鼠などいない」など存外面白い。エプロンの肩紐持ちあげ続けるリラ・リーがとてもいい。最後に彼女を選ぶミーガンもとてもいい。
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