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[コメント] 月夜釜合戦(2017/日)

何かハイなのは判るのだがそれが何故なのかは伝わってこないため、みんな映画が撮れて喜んでいるだけのように観えてしまう。何にせよ陽気なのは結構だが。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







釜ヶ崎は何度も映画の舞台になっている。『暴力』『野良猫』『がめつい奴』『太陽の墓場』『日本の悪霊』『極道釜ヶ崎に帰る』『『(秘)色情めす市場』『じゃりン子チエ』。本作の中盤「街がきれいになった」という詠嘆があるが道理で、上記作品(ロケもあればセットもある)で観られた猥雑さは殆ど見られない。空き地や中庭のある二階家の連れ込み宿、半円形の石段などのロケは『めす市場』を明らかに回想しており、同じ場所なのかも知れないがそれ以上ではない。センター周辺は撮られるが飛田新地の風景すら映されないのは不可解だ。木造安アパートは何も即釜ヶ崎にはならないだろうに。結局冒頭の自転車がベストショットか。16ミリは湿気た感じを出して効果的。花壇はテント設置の妨害用という蘊蓄が勉強になった。

私は大阪では天王寺の安宿(本当に安い)に泊まることにしており、この界隈は定点観測しているのだが、最近はぜんぜん怖くない。だって歩いているのは老人ばっかりだもの。だから本作の登場人物に老人が多いのは的確で、終盤のまるで60年代の亡霊のようなヤクザ対新左翼の激突もこの延長と理解して腑に落ちる処なのだが、しかしいまひとつの批評性に恵まれていない。鶴田浩二の「街のサンドイッチマン」とか歌いださせる制作陣の頭の中はこの時代で固定されているのだろう、としか見えないのだ。なんか意欲的なのは判るのだが、伝わってこなかった。あと、俳優の技量(特に発声)に落差があり、これでコメディは観ていてキビシいものがあった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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