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[コメント] さよならくちびる(2019/日)

まあ、アリスみたいなものなんだろう。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







門脇麦はいい女優だから褒めたいのだがいつも褒めさせてくれない。最終公演で、このコンビの歌が残るかどうかは歴史が決めるだろう、などとと力んでMCするのを聞いて吹き出してしまった。なんと大袈裟なことか。これを生真面目に拝聴する観客は気持ちが悪い。殆ど巫女と信者の生真面目である。内輪でテンパっていて批評の介在などまるで想定されていない。

以前の公演で歌を聴いて涙を流していた女子高生ふたりが、この最終公演に入れず会場の外でツイキャスをイヤホンさして真剣に見つめている。こんな断片も疑似宗教系の気持ち悪さに溢れている。コジェーヴはこういうのを蛙の合唱と呼んだのだろう。歌もそんなものである。こういうのはとうに絶滅したかと思っていたのだが。大人が殆ど登場しない作劇は立体感を乏しくしており、ホームレスの肩叩きのMCは一方的な思い込みめいていて空疎である。青春応援歌みたいな物語はいかにも身の丈が低い。

ただ、門脇がレズビアンだと判明する件はよかった。成田凌が彼女にフラれたと小松菜奈に告白する際にこれが判明するのだが、同時に門脇は小松が好きなのだと判明する仕掛けで、序盤からのふたりの関係、同居やらプレゼントやらが突然意味を持って立ち現われてくる。この話法は秀逸だった。その後も別に大した愁嘆場を用意する訳でもなく、ただ小松のキスだけで済ませるエコノミーもいい。この爽快感はフォークの湿気と好対照をなしている。だからラストもこれで良かった。

撮影はその中盤の、湖のほとりに車を止めてから小松がキスを迫るまでの件はいいアクションがあった。序盤の、門脇がベンチに腰かけて突風に木立が揺れる画もいいものだったのだが、門脇の近影になると途端に背景の木立がピンボケに崩れて画でなくなってしまう。もう邦画全盛期のようには撮れない環境なのだろう。成田の周辺事情はロッカーの暴行だの唐突な親友逝去だの類型的。小松と同じ名前の女の子がアスファルトをショベルで掬っている件は、小松の来歴を幻覚で示したつもりなんだろうけど深みに欠けるしまるで撮れていない。

(評価:★3)

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