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[コメント] よこがお(2019/日)

犀の勃起をご婦人ふたりが語る件などフロイト「夢判断」の映像化みたいな面白味はあるがそこ止まり。19世紀止まり。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







筒井真理子の甥が市川実日子の妹を誘拐してしまう。犯人が筒井の甥だと知っているのは筒井と市川だけ、という時間帯が続く。そんななか、市川は筒井の告白を遮る。筒井は悪くない、告白したら訪問看護ほかの関係が断たれてしまう、と。市川の筒井への横恋慕も浮かび上がる。

この肝心の処が本作は語れていない。筒井には当然、犯人が自分の甥であると世間に知らしめる社会的な義務がある(母親が民事事件にしなかったのとは意味が違う)。それなのに、筒井は告白しない。筒井は市川を性的対象として意識していないのだから、市川の提案に同意する意味がない。マスコミの醜悪な追及も筒井の事なかれ主義への「社会的制裁」としてある種当然と取れてしまう。

本作の面白味は、筒井が市川から押しつけられた、社会空間と私的空間の間の道徳的な線引きなんだろうが地味、ああ云えばこう云うみたいなどうでもいいものに留まった。池松壮亮は何しに出てきたのかよく判らない。復讐は直接、市川になされるべきだ。

サイコパスものは食傷気味。深田はそこに何も足してくれない。犬になる筒井とかは相変わらず『テオレマ』系。ペンキぶち撒かれた自家用車を運転する件は『少年は残酷な弓を射る』、ラストの運転席で意識朦朧とする件は『シークレット・サンシャイン』が想起され、両女優の熱演はティルダ・スウィントンチョン・ドヨンに挑戦ぐらいの印象。押入れのなかで膝を抱える筒井のポーズはマネ「草上の昼食」の裸の貴婦人と同じポーズ。もっぱらそういう画が撮りたかったのだろう。観ているうちはたいそう面白いのだが、終わってしまえば残るもののない映画だった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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