[コメント] 宮本から君へ(2019/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
日本の劇画タッチは行き着く処まで行ったの感がある。アメリカナイズに向けてのこれはひとつの理想像であり、まるでリアルではない。韓国映画なら、イタリア映画ならあるいはリアルになるかも知れないが、このように振る舞う日本人など想像できない。だからこその娯楽作、対極としての思いが籠っているとは云えるのだろう。
敬称の区分やギブス、差し歯で時系列の前後がうまい具合に示されており、観ているうちは流れがいいので気にならないのだが振り返れば良かったのか判らないものはある。時系列順に整理すれば、ラグビー青年との対決を終えてから差し歯を作って蒼井の故郷の漁村(乱暴な漁村の女というのはわりと紋切型ですな)に行って、蒼井は父に出来ちゃった婚を一言意見され、池松の母の嘆きと併せた海辺での蒼井の嘆きに至る。このショットはとても美しい(あの深い空の青は色調整しているのだろう)。
この、双方の親に祝福されなくて、あたしたちふたりこれからどうするの、の問いかけはしかし投げ出され、映画は時系列遡ってラグビー対決で終わる。それでよかったのだろうか。勢いがあるから別に大丈夫っす、と映画は語っている。人生そんな甘いものではない、という疑念は勢いに吹き飛ばされる。これこそが、車輪の下でもがいているサラリーマンが熱中して電車のなかで読んでいるカタルシスの劇画、というものなんだろう。
路上、特に蒼井のアパートの前の空間処理がとてもいい。これはこの監督の『ディストラクション・ベイビーズ』に引き続いての大いなる美点だ。ラグビー青年との格闘のマンションもいい(暗証番号なしに入れる古さがいい)。ラグビーは2019年のワールドカップを嗤っているんだね。そういうことする奴は好きだ。佐藤二朗はKR先輩に激似。
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