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[コメント] プリズン・サークル(2019/日)

犯罪加害者の告白というワイズマン的主題が堂々展開され、多くの気づきを与えてくれる秀作。官制のキナ臭さを心配したが皆無に近かった。優れた犯罪映画と近似する、深く濃くて辛い、人として目を背けてはいけない体験の記録がある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







直人(仮名 以下同じ)。考える前に手が出てしまう。再犯の恐怖があると云う。コンビニに入るのも怖い、盗癖がある、自転車など盗み盗まれるものだ、それで世の中廻っていると思っている、罪悪感は全くない。子供の頃、家でご飯はでなかった。これだけ被害を受けているから、これくらいの加害は軽いと思ってしまう。問いが出される、自分の罪は被害者にどんな影響を与えたか? トラウマのひとつ、妹の万引きを思い出せるようになった。

翔。傷害致死、相手も4割悪いといまも思う。子供がブルブル震えている、判ってもらいたい気持ちがエスカレートしている、自分と同じと思う。10年後の人生を考えろとの課題に、自分が夢見ちゃいけない。

健太郎。子供時代の記憶、一升瓶持って隣家へ怒鳴りに行く父。ナメラレないように生きてきた。人は信じられない。

ロールプレイ、もし被害者だったら。なぜ相談しなかったのかと親族。恥ずかしかったから。泣く加害者に「何の涙ですか?」被害者は人が信用できなくなった。電車で並んでいるのも怖い。

出所者の集い。その日暮らしと語る仲間に周囲は説教。福島除染の仕事している人もいる。出所すると顔出し可になる。インタヴュー受けてきた一人が出所して顔からモザイクが消える。爽やかな印象が残った。

2006年に刑務所での改善指導が義務付けられ、このTCユニット(回復共同体)はこの一環で採用されているらしい。米国モデルで、社会復帰支援員という肩書の人たちがサポートに当たる。しかし彼らが精神分析医のように指導する訳ではほとんどなく、ディスカッションを通じて服役者たちが自らの過去、感情を自発的に言語化する、抑圧された否定的感情、負の感情を思い出し認め合うことを奨励する場の提供がなされている。

指導員が「今が自分と向き合うときですよ」と云うショットがあった。正にそれが目指されている(なお、ブルースマンの指導員がいたのが面白かった)。受刑者4万人に対して年間40人しか受けられないらしい。受刑者ならずとも、会社の研修ででもこういう取組はとてもいいものだ。もっと普及してほしいと思った。エンドタイトルに上野千鶴子、打越さく良の名前があった。

(評価:★5)

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