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[コメント] 肉体の門(1948/日)

中島哲也以上の細かなカット割りでぶっ飛ばす序盤が圧倒的。泥濘、夜明け、溝川、教会、土管から這い出る月丘千秋。マキノらしい超絶構図の連鎖。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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しかも太泉(タイトルは「吉本映画」)には編集機材がなく、マキノが自前でネガで編集したらしい(Wiki)。そんな悪条件でこの編集をする熱意に感動してしまう。中盤、夜のネオン街を疾走する月丘を横から細かく繋ぐのカットもまた、およそ一般的に云うマキノらしくない斬新さ。斜め上に開いた穴から覗くカットの頻発も鮮やかで、この奇矯な主題に相応しい。

ラストの横臥した轟夕起子に十字架が重なるカットなど、当時隆盛なアイディア映画の趣がある。マキノがキリスト教に入れ上げたとは思われないが(戦前の軍国主義と同様)、そこは表層主義者のこと、画が信じていればいいのだという吹っ切りが感じられる。

轟(マキノの嫁さん)は熱演なれど、お決まりの鞭打ちシーンなど痛々し過ぎる。彼女特有のコメディエンヌがこの映画に相応しかったかは意見が分かれるだろう(老醜を晒す逢初夢子のリアリズムとの齟齬が目立つ)。警官になった元宝塚の盟友小夜福子と運命について語らう件は、当時のファンには感慨があっただろう。轟が唄う「あんな女と誰が云う」は「星の流れに」のモロパクリだが、こちらもヒットしたらしい。おきゃんな月丘は好感度大。

(評価:★4)

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