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[コメント] 226(1989/日)

昭和維新の志より女房が大事という腰砕けのヒューマンドラマ。俳優が誰ひとり印象に残らないのだからいい加減なものである。美術は面白い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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事件の冒頭から解散までの数日間を追う。冒頭の集会で面々は「我々の狙いは 昭和維新の志を天皇陛下のお耳にお届けすることだ」「我々は一丸となって新しい日本を産み出す捨て石になるのです」と語る。蹶起趣意書に対して、皇道派の真崎陸軍大将(丹波哲郎)ちは玉虫色の回答をし、天皇に取り継がれるがしかし奉勅命令。「俺たちは陛下の大御心に沿うものと信じて立ち上がったのだ」「決戦だ」。

派閥争いに若手が飛び道具として利用される物語構造はいつもの笠原だが、本当かなと疑う。兵隊さんは本当に純真だったのか。実際は派閥争いと骨絡みだったのではないのか。そしていつも不思議なのだが、ちょっと考えれば天皇がOK出す訳ないし、NGの場合のBプランがないのも情けない。駄目なら自決したらいいやみたいな思考停止があって、実際自害しているが、そんなぐらいでいいのかと思う。三島事件はこの反復だが、一度目は悲劇、二度目は喜劇といったところ。だいたい、総理ほかを別に殺さなくても軟禁でいい。本気で天皇に諮る気があるのなら。

中盤に始まる各兵の美人女房自慢はものすごく、ピアノぽろぽろもすごい。連中は大義より妻が大事だった。本作は考証が正確らしいから、これも本当なんだろう。竹中直人だけが「感傷に耽るときか」「心を鬼にしろ」と叫んでいる。彼が未婚の役処だったら面白かったのだが、既婚だった。

美術は面白かった。日の丸に昭和維新の墨書。旭日旗はない。有名な「今からでも遅くない」の帰還の呼びかけはラジオから聞こえる。同趣旨のアドバルーンはモノクロ写真でしか見たことなかったから、赤色なのに驚いた。赤坂見附のバリケードも山王ホテルの画もカラーでリアル。解散の描写が全員一斉ではなくて、中隊毎なのはるほどと思わされた。

脚本は普通に笠原和夫名義で原作も出版された由。『戦メリ』のパクリが入っている音楽はバカバカしいが、劇中の放歌は興味深い。「歩兵の本領」が唄われる。♪万朶(ばんだ)の桜か襟の色 花は隅田に嵐吹く 大和男子(やまとをとこ)と生まれなば 散兵線(さんぺいせん)の花と散れ 「昭和維新の歌」は最後に唄われる。 ♪汨羅(べきら)の淵に波騒ぎ 巫山(ふざん)の雲は乱れ飛ぶ 溷濁(こんだく)の世に我起たてば 義憤に燃えて血潮湧く

(評価:★2)

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