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[コメント] 爆裂都市 Burst City(1982/日)

巧みな画と編集でもってハイテンションの安定飛行という曲芸を見事に達成している。凡百のパンク映画と一線を画したとても丁寧な映画。本作がなければ塚本も三池もなかっただろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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序盤の揉み合いのバストショット連発からして固有の味を出しているし、これを中盤以降多用しないのがいい。監督は明らかに撮りたい画を山のように準備して本作に望んでおり、またその配分が巧みに考えられている。中盤の廃屋で戯れるバンドメンバーを捉えた件など秀逸だろう。乱暴に見えるキャメラの振り回しにまで神経が行き届いている(変質狂的な編集担当は監督自身、山川直人阪本順治)。

冒頭の疾走するクルマから捉えられた流れる道路照明群がいいのだが、このイメージを全編にわたって使い回すのがクレバーだし、サイドカー登場で繋ぐ話法も愉しい(この異形のコスチュームは『鉄男』とWる)。そしてドラムにより全編を流麗に繋げた編集こそ画期的だろう。『愛のむきだし』などはこの影響下にある。結果、最初から最後までテンション高い無茶苦茶が見事に達成されてしまっている。

話のパッションは無内容を極めたかのようだが仔細に見れば反原発なのであり、本邦政治的パンクスの行き先を予見してしまっている。制作された時代にはあるいはネタでしかなかったのかも知れないが、今やリアルな切り口になったのを制作者は誉れとすべきだと思う。泉谷しげるの軟弱な悪役に吸引力があり、彼に使われる無口な大林真由美が哀れ。映画のテンション高い収束がふたりに見向きもしないのが哀切を煽る。麿赤児もとてもいい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] DSCH

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