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[コメント] 「エロ事師たち」より 人類学入門(1966/日)

面白いのはエロ群像で、女子高生を所望する中村鴈治郎が最高。むっつり助平の役処を演じ続けた彼のキャリアでも多分一番振り切れている。体を「カダラ」と云い続けるミヤコ蝶々も傑作。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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本作で愉しめる処は序中盤のエロ群像。多忙なサラリーマンにエロの奉仕をするのだという小沢一郎の自己肯定の造形には実に味があり、彼を慕うサラリーマン連中との奇妙な交流にも妙味がある。鴈治郎や蝶々の他も、相棒の田中春男も、浜村純殿山泰司もいい。この調子でどんどん転がして行けばいいのに。

一方、中盤以降重点が置かれる坂本スミ子一家とのイザコザは鬱陶しい。そりゃエロ事師していりゃ日陰者の仕打ちも受けるだろうが、それらエピソードをリアリズムに積み重ねて飛躍がなく、ひたすら地味に転落していくのが辛気臭い。そして最後に発狂、では中間小説っぽい通俗じゃないだろうか。しかもこれが長い。後半はパンチが出る度に客席から溜息が二三あがっていた。坂本の発狂などタッチが面白半分で、まあ時代が緩かったから仕方ないのだが、いま見れば顰蹙ものである。この病棟の窓が突然荒野に転換する美術が素晴らしいのが忌々しい。佐川啓子のガングロは当時からあったのかという発見はあった。

本作の美点は姫田のキャメラ(撮影助手は安藤庄平。なおフォースの助監督に田中登)。脈絡なく河辺でテーマ曲をフルートで吹く近藤正臣など抜群だ。殆どを戸外の窓の外からのアングルに設定した今村の方法は、続くセミドキュメンタリー・タッチをここで予告してもいるが、エロの主題と親和性を発揮した本作でも充分な成果を上げている。ラストの船出は世之介が好色丸でユートピアに旅立つ増村『好色一代男』(61)の殆どパクリでありシラケるものがあるが、ここも撮影が素晴らしいので許されてしまう。

(評価:★3)

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