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[コメント] おとし穴(1962/日)

どこが新しいと誤解されたのか不明な過去の遺産のつまみ食い
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







死にきれない幽霊の話は戦前以来のハリウッド不条理喜劇の定番。息子が駄菓子を盗んで逃げ去る非人情なラストは木下、大島らの映画で何度も取り上げられたようなカットだ。これらに本作は何を付け加えて我が物としているのか、よく判らない。笑えないし泣けないし怒らせてもくれない。

目指されたのはイヨネスコ系列の不条理喜劇だろうが、少なくともイヨネスコはもっと笑わせてくれる。面白くない笑い話は哲学的に聞こえる、というヴィトゲンシュタインの箴言が思い出される処で、なんじゃよく判らんけど高尚ねという感想を惹起するだけの目暗ましなモダニズム作品でしかない。田中邦衛の組合潰しを格好良く描いて異次元の官僚組織を匂わせるということならカフカの表層的な模倣でしかなく、その他何の謎へも誘ってはくれない。

井川比佐志のキャスティングは期待させたが、イヨネスコを演るにはリアルに過ぎた。

(評価:★2)

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