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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976/日)

山田洋次まさかの拝金主義映画
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







宇野重吉の登場、その迷惑な言動、この序盤はすこぶる面白い。60年代の山田映画におけるハナ肇の老人版かと期待させる。宇野が本当の浮浪者かあるいは仙人の類だったらどんなに良かっただろう。実は絵描きで有名人、金の成る木でした、という種明かしは当たり前で、ここから話は平凡以下になる。

以下、市役所の接待華やかなりし頃の実態が記録されるが、ダラダラした接待要員の桜井センリ寺尾聰を並べてこれに関する批評もなく、地方は天国みたいな描き方に終始する。宇野と岡田嘉子のリッチな老人の会話が意味もなく挟まれ、最後は寅が宇野を神様のように拝んで終わる。全編通じて寅は宇野を金の成る木としか思っていないのだから、本作を拝金主義映画と呼んでも構わないだろう。

寅から窮状を打ち明けられた宇野は画は仕事だから金のために描かないと云い、寅に家に泊まったときは金のために描いたじゃないかと反撃されて応えられない。これは寅が正しいというよりも当たり前であり、宇野の造形が矛盾している。序盤の浮浪者振りは何だったのか。そして宇野の送った画を太地喜和子は売らないという。これも釈然としない。宇野との思い出に取っておきたい、というほど宇野と太地は絡んでいない。金に困って弟妹を抱えて芸者して、上京までしたのではなかったのか。金に辛い新藤兼人ならこんなラストは採用しないだろうし、それが普通だと思う(もっと値上がりするまで取っておく、というなら判るし、そのほうがむしろ話が一貫しているが、たぶん違うのだろう)。

なお、破産に係る佐野浅夫(悪役も巧い)の抗弁はどうなんだろう。自己破産は本人だけに帰属するのは原則だが、裁判所は当然、実質をみて判断する訳で、佐野のように妻や兄弟に頼ってリッチに暮らすケースが該当するとは思われない。それとも当時の法律は違ったのだろうか。ともあれ、タコ社長は弁護士に相談するべきだっただろう。その費用もない、というならそれも話に盛り込むべきだ。

ラストで太地に結婚しようと云う寅も印象が悪い。だって結婚しないんだもの。ベストショットは夢オチの『ジョーズ』のパロディにおける半身齧られた佐藤蛾次郎と発狂する倍賞千恵子

(評価:★2)

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