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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎の縁談(1993/日)

「自分の好きなことをしたいって云うけど、勉強して誰にも負けないっていう何かを持っているの?」というさくらの説教、私も学生時代に聞きたかった。
寒山

**ネタバレ注意**
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寅の地方就職満男版。並んで島を後にする似た者同士の甲斐性なしふたり。よく撮れていて、いろんな感想を喚起させられる。城山美佳子が可哀そうという方に気持ちが振れる(これならもっと美少女を使うべきじゃなかったか)のと、また徳山かで余韻が消し飛ぶのが困りものだが。畦道縫って駆け込んで納屋に倒れ込む満男と城山のラブシーンが古典的でいい。本作、撮影がいい。

1993年は就職氷河期の最初の年らしく(蔭山克秀氏「やりなおす経済史」に依る。この本面白いよ)、本作はこれを描き損ねており、時代の記録師山田洋次としては痛恨だっただろう。ただ満男だけが就職できないでいるようにしか描かれていない。

もっとも、物語上はそれでいいのかも知れない。遊び人寅の分身満男の就職話はシリーズの沸点であり、さすがに盛り上がる。特に志村喬との関係(博は家出している)を述懐する前田吟がいい。子供には見せない親の気持ちを語って美しい。俺の親も祖父との関係なんか一度も喋ってくれなかったなあと感じ入った。

寅と松坂慶子の恋の馴れ初めは、先刻ご承知でしょうとばかりについに何の心理的説明もなく、ただ雨の日の石段と三味線と寅の番傘捌きで示され、映画っぽくていい。これが私的ベストショット。松坂の寅の口上の物真似も、松坂と島田正吾のタンゴもいい。現役最高齢俳優で有名だった島田の起用は、宴席でも座っているだけの痛々しい渥美清へのゲン担ぎ、スタッフの祈りに見える。

(評価:★4)

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